フードアクションニッポンアワード
愛農学園がフードアクションニッポンアワード2011の大賞となったことは以前にも書いたと思う。
先日そのパンフレットが贈られてきた。1000以上の大手企業などからの応募の中愛農学園農業高等学校が最高の栄誉となったことが改めて嬉しい。
「農の明日を支えたい!土が香り汗が光る情熱学園
農業の担い手を育てる農業高校就農率45%の取り組み」と題された記事は以下のようなものであった。
日本で唯一の私立の農業高校として半世紀に近い歴史を有する愛農学園。広大な農場に囲まれた全寮制の同校には、農業を志す若者が全国から集い、作物を育て、家畜に親しむ三年間の実践的学習を通じて、埃と喜びをもって農業の明日に立ち向かおうとしている。
日本で唯一の私立の農業高校
三重県伊賀市にある愛農学園農業高等学校は1963年、農業後継者の育成を目的に全国愛農会が設立した日本で唯一の私立の農業高校である。広大なキャンパスには、水田、野菜畑、果樹園、牛舎、養豚場、養鶏場、演習林などが付設され、実践教育の場となっている。生徒たちは全員、寮で共同生活をし、作物を育てる喜びや農業の厳しさを体験的に学ぶとともに、自分たちが育てたものを毎日食べることで、食べ物を大切にし、自然の恵みに感謝する心を育んでいる。同校は持続可能な農業の確立を教育の柱としており、牛、豚、鶏の糞尿は畑の堆肥として活用するなど、化学肥料や農薬を使わない循環型農業を実践している。
同校の存在は全国に知られており、入学希望者も全国に及んでいる。特筆すべきは卒業生の就農率の高さで、これまで1,000人余りの卒業生を送り出しているが、そのうち45%がそれぞれの地元で農業の担い手となっている。過疎化・高齢化が著しい限界集落で農業に取り組む卒業生も多く、村づくりという観点からも同校の果たす役割は大きい。
校内自給率70%の取組
校内自給率を高める努力をしており、海産物を除いて校内の食事はほとんど生徒が育てた作物、家畜でまかない、味噌やしょう油といった基本的な調味料、ベーコン、ジャム、漬物など加工食品作りも積極的に行っている。学校農場では、搾乳牛20頭、採卵鶏2,000羽、母豚10頭を飼育し、果樹栽培は50アール、野菜栽培は70アールの生産規模で、校内自給率は70%に達する。
学校農場で生産した農作物は近隣の直売所をはじめ、地元スーパーや自然食レストランなどに出荷し、イベントがあれば生徒たちが出張販売に出向き、安心できる野菜を求める地元消費者に喜ばれている。また、14年前から毎月1回、学校の支援グループが主催して、校内で生産した農作物を中心に地場の食材を利用した料理教室を開催し、教室で学んだ人たちが新しく教室を開いたり、オーガニックレストランを開業するなど、国産食材の魅力の啓発や自給率向上にも寄与している。
また、エネルギー自給にも取り組んでいる。2010年、校舎をリニューアルし、OMソーラーを導入、冷暖房費を大幅に削減したほか、農業用機械にも一部調理用廃油を使用したバイオ燃料を活用している。2012年度には、バイオガス製造装置を設置したり、菜の花を栽培して、ナタネ油を資源循環に生かす「菜の花プロジェクト」への参加も予定している。
新規就農者への支援も
全国愛農会では、新規就農希望者を支援するため「大学講座」を開催しており、東海地区をはじめ、関西地区などからの受講者もあるなど新規に就農を希望する人たちから注目されている。堆肥作りから土作り、野菜作り、農業経営などを教える座学のほか、愛農高校の学校農場や近隣の農家での体験実習も行っている。
東日本大震災被災地への支援
東日本大震災後、原発事故により地元での農業を断念し、移住先を探している被災者のために、農地や空き家探しなどの支援を積極的に行っているほか、全国愛農会や愛農高校のネットワークを活用して、農業を断念しないよう行政にも受け入れ態勢の整備を働きかけている。また、全寮制という強みを生かし、農業を志している受験希望者がいれば、積極的に受け入れることにしている。
同校の取組は、1998、1999年度の「特色教育振興モデル事業」(旧文部省)に採択されたほか、「日本環境経営大賞・環境創造プロジェクト賞」(三重県主催)、「環境保全型農業推進コンクール優秀賞」(全国有機農業推進委員会主催)などを受賞したこともあって、テレビや雑誌などに多く取り上げられ、それを見て入学を希望する生徒も増えているという。
農業を取り巻く環境が厳しさを増すなか、日本の食料自給の根底を支える農業をめざす若者を育成している同校の存在は貴重である。今後は、高校3年間の学習を経て農業者を志す生徒たちが、着実に農家として自立していくためのサポート体制を充実させ、就農率を上げることで、限界集落の解消に貢献したいと考えている。