滝山コミューン一九七四」と「みなさん、さようなら

昨年末から今年にかけて 上記二つの団地を舞台にする本を読んだ。「研究会」のことがあり団地と言う文字を見ると反応してしまう。「滝山コミューン一九十四」は文字通り1974年の滝山団地の小学校を舞台にするもの。著者の原武史はいうまでもないが「大正天皇」で注目された歴史学者。鉄道ものの著書でも著名な人である。
1962年生まれであり、恐怖を覚えるこの話はもちろん著者の体験と記録、記憶、調査が基にある。無批判な信仰と呼んだほうがいいと思われる信念がいかに被害の大きいものであるかを思う。昨年の「朝日」年末書評で二名の人がこの本をあげていたと記憶する。「みなさん、さようなら」久保寺健彦は特に特定できないが郊外団地に引きこもり、団地の退潮を見続ける少年の話、幾分創作のにおいが濃い設定。主人公の十代いわば青春を描くもの。引きこもりの根拠の提示があってからは納得しながら読む。これは新春の朝日書評欄で取り上げられていたことで知った。団地と言う形態が戦後の一時代の集団としての社会実験であり、一人一人の当事者にとっては一種の人体実験でもあったこと、そこでの教育がそうしたものの極端な場であったことを思う。特に空白と思っていた時代が極めて深く60年代70年代の負の波の中にあったことを考えさせられた。ソビエト的社会がここにあったともいえるのか。