蓼科の週末住宅

長野県茅野市

©Toshihiro Sobajima

建設地:長野県茅野市
竣工:2013年5月
規模:地上2階
構造:木造、鉄筋コンクリート造
敷地面積:1,055.05㎡(319.15坪)
建築面積:139.98㎡(42.34坪)
延床面積:173.40㎡(52.45坪)
用途:個人住宅

設計:野沢正光建築工房
構造設計:基本設計 ホルツストラ / 実施設計 山辺構造設計事務所
家具設計:コイズミスタジオ
施工:小澤建築工房
設備:OMソーラーシステム
掲載紙:『住宅特集』2013年10月号(新建築社)

©Toshihiro Sobajima

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©Masamitsu Nozawa Building Workshop

©Masamitsu Nozawa Building Workshop

敷地は八ヶ岳を南東に望む別荘地内にある。夫婦と娘家族が利用し、また彼らが多くの親戚や友人たちを迎えるための“別荘”として計画を依頼された。南に傾斜し、周辺のカラマツ林から視界が開けた眼前ほぼ真正面に、広い空と雄大な八ヶ岳の峰々を見る。実に景観に恵まれた敷地である。
2階を木造、1階を鉄筋コンクリート造として斜面に埋め、敷地北側の道路からは建物が大きく見えず一見平屋にも見えるよう計画した。浴室も含めすべての部屋を南面に配し、開口の大きさ、方位、地面からの高さの違いが、この建物を取り巻く周りの自然の豊かな差異を際立させている。居間は間口2.7mの片引き戸、FIX部分を含めて5.4m幅の開口が前方に広がる八ヶ岳の圧倒的景観を捉える。北の急勾配屋根の一部は跳ね上げ式の開閉屋根とし、南側と北側の引戸を開け放つと、居間はあたかも大きな半外部空間となって雄大な自然と繋がる。
木造の架構の基本設計は稲山正弘氏、実施設計は山辺豊彦氏との協働により、柱が少なく景観に対する大きな間口と、大勢の人が集まる広い空間を実現した。4本、3本、2本と順に嵌合された登り梁が勾配の異なった屋根面を支える特徴的な構造フレームを、2,730㎜毎に5フレーム配することで全体を構成した。本数や角度の異なる材同士の接合は、大工の手による極めて精緻な手刻みによって実現されている。

構造フレーム同士は面材の釘ピッチを考慮して150㎜毎に配された90×90㎜の母屋垂木によって、一枚の大屋根となり建物全体の水平剛性を確保している。
省エネルギー基準による地域区分のⅡ地域に指定されてはいるが、高地ゆえ冬季の未明には零下20度まで下がる。よって開口部は断熱Low-Eトリプルガラスの木製建具とし、基礎、外壁、屋根とも十分な断熱を施した。また外断熱とした1階の蓄熱ボリュームと屋根集熱換気システム、薪ストーブと電気蓄熱暖房機の併用によって室内気候を快適に維持し、極寒期の利用をも可能としている。
厳しい寒さ故、一年を通して別荘地内で暮らしている所有者はほとんどいない。暖房が全く必要無い期間は6月から9月までの極わずかな期間のみとなり、計画当初は施主も冬季の利用は考えていなかった。それではもったいないからと、寒くない“週末住宅”を造りましょうとこちらから提案した。春はヤマザクラが可憐に咲き、夏は圧倒的な量の緑に囲まれる。秋は色とりどりの紅葉に包まれ、冬は辺り一面静かな白に覆われる。豊かな四季を余すところなく享受できるよう、“週末住宅”と名付けたこの建物が“もう一つの住まい”として1年を通して利用されることを期待している。(K.I)