愛農学園農業高等学校女子研修宿泊施設

三重県伊賀市

©SOBAJIMA, Toshihiro

建設地:三重県伊賀市
竣工:2026年2月
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:46186.24㎡
建築面積:356.43㎡(108.0坪)
延床面積:600.37m2(181.9坪)

用途:寄宿舎/住宅
設計:野沢正光・スタジオノラ設計共同体
構造設計:山辺構造設計事務所
家具設計(一部):Koizumi Studio
施工:大道建設
設備:真空管式太陽熱温水器

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全寮制の農業高校における女子生徒の宿舎と、宿舎を管理する寮監職員家族の住宅の計画である。2010年竣工の本館再生工事、2013年竣工の木造校舎に続く、愛農高校での3件目のプロジェクトとなる。近年の入学希望者の増加への対応と、増築を重ねた既存女子寮の耐震性への不安、温熱性能の不足、設備機器や仕上げの老朽化を受け、受け入れ人数の拡充と生活環境の改善を目的として2023年に新宿舎のプロポーザルが実施され、本館再生工事と木造校舎を担当した元所員の藤村真喜氏(現スタジオノラ共同主宰)との協働により設計者に選定された。
プロジェクトの進行にあたっては担当教諭を中心に、卒業生やPTAも参加する建設委員会、生徒との継続的な対話を重ねながら、一貫して「みんなでつくる」体制がとられた。当初は既存女子寮を活用する案も検討されたが、既存施設は改修を重ねながら別用途での利用を想定することとし、新たに女子生徒の生活の場と、聖書を学びながら食農教育を実践するための研修機能を備えた研修宿泊施設を新築することとなった。
愛農高校の敷地は伊勢へと続く初瀬街道沿いの小高い丘の上に位置している。校舎やグラウンド、図書館、食堂に加え、畜舎や加工場、果樹園、畑などの農場機能、男子寮と女子寮、単身職員宿舎や職員住宅が混然一体となり、ひとつの集落のような環境を形づくっている。生徒たちは学校での学びと農場での作業、寮での共同生活を往還しながら日常を営んでいる。校舎、農場、寮での時間が連続するこの環境に応答し、それらをシームレスにつなぎながら、環境と共に在る生活の場の設計を主題とした。
建設地は南側の豚舎、北側の既存女子寮に挟まれた東西に長い敷地である。建設費の高騰に対し合理性を確保しつつ、修繕のしやすさや可変性を備え長期的な利用に耐える構法とするため、木造ドミノ住宅の考え方を参照した在来木造によるSI工法を採用し、2階建てヴォリューム4棟を東西に連ねた。西から順に管理棟、研修棟、寮室棟A、寮室棟Bからなる。管理棟には寮監家族の住まい、研修棟には浴室や研修室、調理室などの共用機能を設けた。寮室棟には各階3人部屋を3室ずつ設け、全12室、最大36人で生活する。少人数制をとり、生徒一人ひとりと向き合う教育方針に配慮し、各室、各個人の居場所がそれぞれ異なる性質を持つよう計画した。

これまでの女子寮と同様に一学期ごとに部屋替えを行う生活を前提とし、寮室の環境が特定の条件に偏らないよう南北両側に配置している。南向きの部屋や北向きの部屋、角部屋や寮室間に挟まれた部屋など、方位や位置の違いによって光や風、温熱環境、外の風景に差異が生まれ、場所ごとに異なる環境が立ち現れる。すべての寮室を均質に南向きとするのではなく、環境の微差を受けとめながら生活する場のあり方がこの学校にふさわしいと考えた。
各棟の位置を南北にずらしながら連ねることで隣棟との距離を確保しつつ外部にひらきやすい余白が生まれ、廊下やベランダに設けた小さな共有の場も含め、それぞれの場所が使われながら意味を持つことを想定している。さらに、開口部の数や位置、大きさ、家具の種類と配置、仕上げのトーンにも違いを与え、各室の居場所が固有の居心地を持つよう設えた。
寮室内に設けた「小部屋」と呼ぶロフトベッドは全4タイプあり、小泉誠氏との協働によるものである。小部屋のプライベートスペースから寮室内の共用スペース、数人で利用できる廊下やベランダ、屋外空間、さらに皆で集まる研修室へと生活の領域が段階的に広がっていく構成としている。
卒業生から寄付を受けた約13㎥のケヤキ材を活用することも一つのテーマであった。180mm角の大黒柱や無柱となる研修室の屋根架構などの構造材をはじめ、上り框や階段段板、ベンチなどの仕上げ材、建具の引手や家具の造作材として、手で触れ目に見える箇所に多く用いた。日々の生活のなかで繰り返し触れられながらゆっくりと変化していく。
給湯には自然エネルギーを利用した真空管式太陽熱温水器を採用している。二重ガラスの真空管により熱交換効率が非常に高く、冬季においても十分な給湯温度が得られる。毎日使う浴室の湯をまかなう設備である。
1972年に建った以前の女子寮は多くの卒業生が生活してきた場であり、長い時間の積み重ねによる魅力を備えている。新たに建築された女子研修宿泊施設もまた、使われながら時間を重ね、永く愛される生徒の居場所となることを願っている。本館再生工事に始まった愛農高校の環境づくりへの取り組みとその潮流のなかで、本計画もその一端を担うことができたと感じている。(U.K)