益子の住宅

栃木県益子町

©Toshihiro Sobajima

建設地:栃木県益子町
竣工:2017年4月
規模:地上1階
構造:木造
敷地面積:957.01㎡(約289坪)
建築面積:224.31㎡(約68坪)
延床面積:175.94㎡(約53坪)

用途:個人住宅
設計:野沢正光建築工房
構造設計:樅建築事務所
施工:深谷建設
掲載紙:『住宅特集』2020年3月号(新建築社)
    『住宅建築』 No.488(建築資料研究社)

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栃木県益子町に建つ母屋と細工場の二棟による戸建住宅である。

二棟は地元の八溝杉の流通材を基本に、地元大工の熟練した技術によって建てられた。母屋は登り梁と方杖を嵌合させた架構形式を採用し、奥行き(南北方向)に4間のスパンで柱のない空間とした。精緻な手刻みによる仕口加工と長ビス・埋め込み式のボルトの併用により、材同士の接合部に金物が目立って露出しないよう、住宅としての静けさや品の保持に努めた。寝室や書斎、台所などは家具や大きな引戸で仕切り、間取りの変更に対応し易い可変性に富む住宅とした。また今回もOMソーラーシステムを採用することで、室内に温熱的な境界の無い住宅となっている。南面に連続して設けた住宅用アルミサッシによる開口面を躯体より離して設置することで、耐力壁と開口部との間に障子と襖を引き込めるよう計画した。建具(レイヤー)を重ねることで、日射熱の取得と遮熱、採光と遮光など、1日や1年を通し求められる自然環境との応答に対し可変性を持たせる計画とした。細工場は奥行き3間のスパンに対し、材寸を抑えるべく片流れのトラス構造を採用した。下弦材(60×120、6m材)を2本離し上弦材や斜材、垂直材を挟み込むことで、ボルトではなくビスによる接合を可能とし、無計画な金物の露出を避けた。

木造平屋建ての二棟によりいかに外部に場を形成するかが計画初期のテーマであった。元々は施主のアトリエが建っていたこの土地や自然環境の記憶を引き継ぐべく、立木をできる限り残し、二棟は元のアトリエの向きと変えることなく南面に正対することが求められた。各々の建物の通風や採光を充分確保しつつ、一体性を生む付かず離れずの関係性を担保するため、二棟の軒先同士の離れ距離や傾斜地における建物同士の高さの関係に対して、模型や図面等で綿密に確認を重ねた。

建物が向き合う面に各々大きな軒下を設け、お互いを向き合う関係性を強調した。長年この森で暮らされてきた仲の良い家族の生活や時間が、自然と溢れ出る場所となることを期待している。(K.I)