地元の木と地元の技術でつくる木造建築

1. 伝統的な技術の延長にある現代の木造住宅

いわむらかずお絵本の丘美術館/1998

地域で受け継がれてきた伝統的な大工技術と現代の解析技術を組み合わせることで、地域に根差したそこでしかできない木造建築の実現に数多く携わってきました。いわむらかずお絵本の丘美術館では、地域工務店と力を合わせ、長大スパンの開放的な展示空間を実現しました。

地域にある大工の技術や木材を積極的に用いることは、地域において豊かな文化を育んでいくことにもつながります。現代の技術を取り入れながら、長きにわたり培ってきた技術や合理性、美学を受け継いだ木造建築をつくっていくことが、持続可能な社会に繋がっていくと考えています。

2. 木造建築の可能性を広げる

愛農学園農業高等学校木造校舎/2013

中大規模の建築においても、地域工務店と共に木という素材がもつ魅力と物性を最大限に活かした木造架構を提案してきました。愛農学園農業高校木造校舎においては、中小断面のスギ製材を用いた樹状の方杖が大屋根を支え、家具と組み合わせることで本に親しむためのゆったりとした静かな空間となりました。

和水町立三加和小中学校では、県産のスギによる重ね束ね材を校舎と体育館に使用しています。全て仕口が異なる体育館の梁は大工が墨付け加工し、大工がいたからこそできる大架構となりました。

和水町立三加和小中学校/2013

3. 木の架構が持つ美しさや力強さを感じられる建築

上:信濃境の住宅/2011  下:蓼科の週末住宅/2013

木の架構がもつ美しさや力強さをそのまま感じられる建築が良いと考えます。構造材を覆って隠すのではなく、そのまま現しにすることで、各地域の良質な木材や精密で高い技術を持つ大工の技術を活かした空間となります。

使い手が、木という生きた素材の質感や感触を味わうことができ、建物に込められたつくり手の工夫を日々使いながら感じることができる点が、ダイナミックな架構を持つ木造建築の魅力だと思います。