信濃境の週末住宅

長野県諏訪郡

©Toshihiro Sobajima

建設地:長野県諏訪郡
竣工:2011年5月
規模:地上2階
構造:木造一部鉄筋コンクリート造
敷地面積:401.35㎡(約121坪)
建築面積:117.13㎡(約35坪)
延床面積:171.10㎡(約52坪)
用途:個人住宅
設備:OMソーラーシステム

設計:野沢正光建築工房
構造設計:ホルツストラ
家具設計:コイズミスタジオ
施工:小澤建築工房

掲載紙:『住宅特集』2011年8月号(新建築社)『住宅特集』2012年3月号(新建築社)『コンフォルト』2012年6月号(建築資料研究社)
新建築住宅特集2011年8月号 映像

©Toshihiro Sobajima

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©Masamitsu nozawa Building Workshop

©Masamitsu nozawa Building Workshop

©Masamitsu nozawa Building Workshop

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「長い時間を見据えた住まい」
敷地は、高い木に囲まれた南斜面、木々の向こう西よりの南に甲斐駒ケ岳を望む。敷地を出て少し歩けば東に八ヶ岳の峰々が連なるのが見える。建物は開拓により開かれた小さな集落の一隅にある。周辺は開拓の時代の風景が生きている。斜面地は雑木林だが、平坦地には蔬菜畑が広がっている。敷地の前、後ろには土地の匂配に沿うようにつくられた幾条かの水路がある。ここを拓いた人の手によるそれは、今も水をたたえて流れ、その勢いは速い。
付近は冬季の日射量がきわめて多いところとして知られるが、きわめて強い北西の寒風が吹くところでもある。裏の樹林が幾分かそれを弱めてくれている。
建物は1階部分をコンクリート造とし、上階を木造とした2階建て、主に2階部分が生活の場である。2階は一室の中に家具的な「設え」(インフィル)により、キッチン、リビングルーム、ベッドルーム、書斎などを配し、1階コンクリート部分には陶芸の作業場、書庫、風呂、トイレなどが入る。「設え」のデザインは小泉誠氏との協働である。コンクリートの躯体は外断熱し、長く飛び出るコンクリートスラブはヒートブリッジを切断する処置を取った。木造部分の架構は今回も稲山正弘氏との協働であり、210×120mmと120×120mm断面のスギ材をかみ合わせながら組むというもの。この架構によって現れた一室を覆うシェルターがこの建物の魅力だが、加工はきわめて順調であったし精緻な空間となった。

相変わらずこの国の木造大工の腕に関心する。プランの一部、ダイニングテーブルのある南東部分が欠き込まれている。この部分の内外の区画は軒下の水平面で取る。開口部はトリプルガラス木製サッシである。
例により急勾配屋根部が太陽熱集熱換気システムの集熱部である。今回は2本のダクトにより、1階コンクリート部の床下と2階床下に分けて供給するように計画した。外断熱されたコンクリート部の熱容量がきわめて大きいため、これが室温の保持に大いに貢献している。
竣工から日数が経っていないのだが、外気温の影響は少なく、昼夜とも一定の室温20℃を保っている。ちなみに補助暖房として1階にペレットストーブ、2階に薪ストーブを設置した。
建主はいわゆる別荘地でない小さな集落の中、鉄道駅から歩ける距離にあるここを敷地とした。これはこの住宅が必ず長く使われていくことを、私たちに確信させる大きな根拠となった。東京の家とここは相互に活用され、季節により時により使い続けられ、それぞれの生活を快適に支えるだろう。週末住宅と名付けてみたのだが、いつか東京の家の方が週末住宅になる日もあるかもしれない。寒風の中で快適に過ごすことができる装備は施してある。(M.N)