飯能商工会議所

埼玉県飯能市

©Toshihiro Sobajima

建設地:埼玉県飯能市
竣工:2020年3月
規模:地上2階
構造:木造
敷地面積:904.29㎡
建築面積:544.76㎡
延床面積:755.10㎡

用途:事務所
設計:野沢正光建築工房
構造:ホルツストラ/稲山正弘
機械設備:科学応用冷暖研究所/高間三郎
家具・サイン:Koizumi Studio/小泉誠
施工:細田建設
掲載紙:『新建築』2020年11月号(新建築社)
受賞:
第24回木材活用コンクール 優秀賞(全国木材組合連合会会長賞)
2022年日本建築仕上学会学会賞 作品賞 ・建築部門
2023年日本建築学会作品選奨/業績紹介

映像

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©MasamitsuNozawaBuildingWorks

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地域の材と技術による地産地消型の木造建築
2018年プロポーザルにより選定され、この春竣工を迎えた。プロポーザルでは、「地域商工業振興」「観光振興」「西川材振興」「交流・コミュニティ」の拠点として機能すること、また地域材である西川材と新しい木質材料であるCLTを活用し建設することが求められた。

敷地は埼玉県飯能市の中心であり旧商工会議所の跡地、前面の通りには古くからの商家が建ち並ぶ。人口減に加えロードサイドの大型店舗に客足をとられ、シャッターを下げた店舗が散見されたが、近くの天覧山へ向かう観光客の流れや市民の生活動線としてバスや車の往来の多い通りからは、「観光振興」や「交流・コミュニティ」の拠点としてのポテンシャルが十分に感じられた。まちに開かれ人びとが訪れやすい建築となるよう、商工会議所執務室、観光協会執務室、多目的に利用可能な大会議室のすべてを1階に置き、中庭や広い屋上など開放可能なスペースを設け、祭りや催事ごとの際に市民が多く集える計画とした。

基本設計より、市や西川地区木材業組合との連携により計画は進行した。確保可能な材寸や乾燥方法などの綿密な協議により構造計画の見直しを行いながら、工事発注の半年前より伐採や乾燥に取り掛かってもらった。構造材はすべて西川材のスギ・ヒノキ認証林材(SGEC認証林)を用い、また階段や手摺り、小泉誠氏との協働による家具も、構造材の製材時に出た大きな端材や西川材の幅はぎ材を採用することで、西川材の多様な活用方法を示し、「西川材振興」の拠点としての機能が十全に果たせるよう計画を進めた。

 
準防火地域、延床面積500㎡以上、木造2階建ての事務所という条件において、西川材の製材とCLTの両方を現しとすること、また「地域商工業振興」の拠点として、材料のみではなく地元の職人や企業の技術により建設が可能とすることを前提とした。耐火建築物である木造の中央棟を挟み込むことで(別棟解釈:昭和26年3月6日住防発第14号)、執務室のある西棟と大会議室のある東棟の木架構を現しとした。CLTを用いた先進的な木架構や建具工事での加工を想定した組子格子耐力壁は、特殊な金物や加工が必要ないよう地元の職人や加工場との協議を綿密に行い、地産地消型の木造建築を提案すると同時に、現代の構造解析や新しい木質構造技術と日本古来の軸組工法との融合により独創的な木造建築をつくることを目指した。実際に現場で組みあがっていく木架構を見て、職人の高い技術、精緻な機械加工、入念な準備による現場管理、そして現しの化粧材の素晴らしさなど、建設に関わる皆の熱意や誇り無くしては実現しない計画だと強く感じた。

ここで試みたCLT平行弦トラスや組子格子耐力壁はれっきとした構造であるが、構造か装飾かがとても曖昧で魅力的な様相を纏うものとなった.それらは我われと長年協働する稲山正弘氏の独創によるものだが、開放的かつ耐震性の高いこの木架構による空間は、通りを歩く人びとにもそれが感じられるものであり、まさに強く美しい西川材を表現するにふさわしい建物となった。(K.I)