海田町役場

広島県海田町(現代計画研究所とJV)

©Toshihiro Sobajima

建設地:広島県海田町
規模:地上4階
敷地面積:3,678.80㎡
建築面積:1,990.08㎡
室内床面積:6,668.66㎡
構造:RC造、S造 一部SRC造(柱頭免振構造)
用途:庁舎

設計:現代計画・野沢建築工房設計共同体
構造:山辺構造設計事務所
設備(基本設計):科学応用冷暖研究所/高間三郎
電気設備:環境プランナー・みよか設計
家具・サイン:Koizumi Studio/小泉誠
造園:ランドスケープデザイン・アトリエ風
施工(建築):清水建設・鴻治組建設工事共同企業体
施工(電気):中電工
施工(設備):東洋熱工業

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©SATOH PHOTO

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海田町は広島市の東に隣接し、海と山に囲まれた自然豊かな暮らしやすい場所である。人口約3万人で若年層が多く居住している。1978年建設の旧庁舎は耐震性不足や内装・設備の老朽化などの問題を抱えており、JR高架化事業を契機に新庁舎へ移転することが決まり、2017年の基本計画・基本設計プロポーザルに現代計画研究所とJVで応募し設計者に選定された。

窓口業務のIT化が進み来庁する機会が今後減っていくことを考えると、町役場は訪れたくなる場所であることが求められるようになる。町民に親しみを感じてもらえる開かれた場所にしたい、快適で居心地がよい空間をつくりたい、ということが設計の出発点にあった。「守る」(防災・プライバシー確保)と「ひらく」(都市に・町民に・環境に)をどう両立させるかということが重要なテーマであった。

間口の広い南側には交通量が多い国道2号線の高架があり、南側以外の三方には隣家と集合住宅が迫っている。日射を受ける東西と集合住宅が迫る北面は開口部を少なくし、南面に水平に連続する大きな開口を設けることで、音・視線・日射をコントロールしている。最上階の北側ボリュームをセットバックし屋根に勾配をつけて高さを抑えることで、周辺に影が落ちにくいように配慮している。北側中央に設けた外部吹き抜けは、南北に30mある執務室に昼光を取り入れる役割を担う。長く使われる建物であることから、スケルトンに関わる建築の形態やボリュームの操作によって周辺環境との調和を図るとともに環境負荷を減らすことを目指した。

窓口業務を行うメインの執務室がある2階と3階は、天井がPC床版あらわしとなっており、PC床版のリブの間を通るソックダクトを介して空調を行う。中間期には、機械室から取り入れられた外気がソックダクトによって室内に供給され、外部吹抜に面したオペレーターから排気することで外気冷房ができるよう計画している。南面のサッシは断熱性能の高い木アルミ複合サッシとし、冬期は積極的にダイレクトゲインによる日射熱取得を図り、夏期は深いバルコニーにより日射を適切に遮蔽することで、年間を通して空調負荷の低減を図った。また、広い勾配屋根をいかして太陽熱集熱パネルを並

べ、太陽熱集熱式床暖房(OMソーラー)を導入することでピロティ上にあり町民の利用が多い2F床への冬期の補助暖房と夏期夜間の外気取入れをしている。柱頭免振の採用、躯体あらわしの大スパン空間という構造的な特徴が目立つが、設備も建築を構成する重要な要素として設計の初期段階から綿密に計画を行った。意匠・構造・設備が自律的でありながらも統合された状態を目指した。

利用者に親しみを持ってもらい居心地が良いと感じてもらえる場所をつくるための試みも、広い意味での環境デザインと考えている。例えば、歩道と一体的に整備され前面道路とシームレスに接続する南側の軒下空間、周辺の山々一望できる南側のテラスは、まちとのつながりを感じることが親しみを生むことを意図して設けている。手で触れる、目で見て感じるという部分では、木製家具や木製ルーバー、海田町にある色を用いたファブリックやサインの色彩デザインも環境をつくる上での重要な要素である。細部まで配慮が行き届いた木製家具のデザインはこれまでも協働している小泉誠氏によるものだ。旧庁舎で50年近く使われていた剣持勇デザインの家具を修繕/再生して新庁舎使うことができたことも、長く使う公共建築における家具のあり方としては、一つの成果であるといえる。広さにあまりゆとりがない敷地に余地を見つけてエッジを緑化し、簡易な灌水システムを備えた壁面緑化・屋上緑化も行っている。緑化は環境負荷の低減に有効にはたらくとともに、市街化され緑が乏しいエリアに潤いを取り戻す役目も果たす。

奥行きのある庇や植栽で日射遮蔽をした南面の開放的で明るい開口部廻りは、木製の家具を置いて来庁者がたたずめる場所となった。まちに対して開かれたファサードは設備や環境に関わる様々な試みの集積が可能にしたものであり、結果として庁舎にはありがちな権威を象徴するファサードとは真逆の飾らない出で立ちの庁舎となったのではないか。都市と家具は同時には考えられないが、建築はその両方とつながり橋渡しをすることができる。様々な与条件の整理に追われる中でも常に意識していたことである。

(Y.I)